不思議な縁
上田 正昭
 大学を卒業する時、毎年正月に会おうと誓い合った三人の友がいる。それぞ れの会社に就職し勤務地もバラバラになったが、正月には必ず大阪に帰省し、 四人揃って語り、飲み、励まし合った。十三年間続いた四人の会も、家族の都 合等で集れなくなり、その後自然消滅。めいめいが個々に会うことはあっても、 四人が揃うことは当分ないのではないかと思っていたが、昨年の春、十七年振 りに四人が顔を合わせ、旧交を暖めることができたのだ。
 四人はと言うと、まずは一井捷二君。十年前より千葉に住み、現在は茨城の 鉄鋼会社に勤める。中堅商社に就職したが、その後転職、数回に亘り勤め先を 変えた波瀾多き男。
 魚住正治君は、十五年前に大阪より熊本に転勤となり、お袋さん、妹さん家 族も近くに呼び寄せ、今ではれっきとした熊本県人。
 次に石田良典君。現在沖縄に住み、暑さと戦っている。東京、名古屋、仙台 と各地を転々、その都度家族も大移動。
 そして私は、一番長く地元大阪に居座って来たが、二年半前より福岡勤務と なる。これで四人全員大阪から離れてしまった。こうした四人に再会の機会を 作ってくれたのが魚住の長女の結婚式。熊本で楽しく懐しき一夜を過すことが できたのは、望外の喜びであり、またの出会いを約して別れたのだった。この 再会の前触れとして、友のきずなの強さを感じさせられる偶然の出来事が昨年 の秋起ったのだ。
 一つは、熊本の魚住宅を始めて訪れた時のこと。「一井はその後どうしてい るかなぁ」と、二人で話した直後、当の本人から突然の電話。当時、一井は勤 め先が倒産し、個人的にも株で失敗、尾羽打ち枯らす状況。こちらから連絡す ることも憚られ、音信不通となっていたのだ。彼の職場決定の報に二人ほっと するとともに、あまりのタイミングに驚いたのだった。
 もう一つは、その二週間前に起った石田と一井の大阪での出会い。一年振り に沖縄より出張した石田と職捜しのために大阪入りした一井とが梅田でバッタ リ遭遇。大都会での奇跡の瞬間。
 神の引き合わせとでも言うか、こうして半年後に四人の再会となったのだが、 何か運命的なものを感じ、いつまでもこの関係を大切にしたいと思う。
上田 正昭
昭和17年10月28日生
京都市出身・福岡市在住
〈好きな言葉〉「一期一会」